第132号「海に学ぶ体験」佐藤茂夫

第132号「海に学ぶ体験」2017.9.29配信

 本日9月11日は東日本大震災から6年半が経過した日である。学校の安全教育を専攻とする小生にとっては、特に大川小学校の事例はそれまでの思考の基盤が大きく変わる契機となった。日本にとって多くの分野で地殻変動が起こった日でもあった。幕末の黒船襲来、敗戦に匹敵する歴史的曲がり角であるが、検証と将来への方向性は未だ不十分であると思う。
 九州に在住する者にとってはもう二つ7月9日にユネスコが「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群を世界文化遺産登録に決定した事し、タイムリーに10月28日から29日に第37回全国豊かな海づくり大会が宗像市で開催されるなど、海にかかわるイベントなど記念すべき年でもある。
 小生と海のかかわりについては以前のコラムで紹介したので、振り返って読んでいただければ幸いである。今回は台湾との関わりについて少し振り返る。
 1996年台湾で初めて住民の直接選挙による総統選挙を進める中で中国軍がミサイル演習を実施した時期である。小生は妻と二人の息子(3歳と4歳)を連れ、家族4人で台湾中部の嘉儀YMCAに協力主事として赴任し2年間アクアティック(水泳など水にかかわる事業)に携わり、故小森栄一氏より学んだ脳性まひ児の水泳指導など新規事業を含め基盤の定着に協力した。
 選挙中は台湾への渡航が自粛されたが、大阪YMCAのサッカーチームが交流試合で訪問したり、台湾の人々にとっては心強かったようである。息子たちも嘉儀YMCAの幼児園に入り台湾語で生活し、同年代の子供たちとともに成長した。無事家族4人はその務めを果たし帰国することができ、感謝である。その九州地区のYMCAの水泳大会に嘉儀YMCAの子供たちが参加するなど交流が続いたが、現在嘉儀YMCAは閉鎖しており交流は絶たれている。
 その後、福岡教育大学で国立台湾師範大学の鄭恵美教授とヘルスプモーション分野での交流を深め数回訪問し、研究発表などしている。鄭氏は福岡教育大へ研究交流員として2年間訪日し、その後毎年学生を連れてフィールドワークに日本を訪問するなど交流は続いている。
 今年の夏は芦屋海水浴場で海の監視業務を行いながら、海辺の自然学校を実施し、若い指導者や子供達と共に海に関わっている。地理的にも文化的にも海は人々を隔てる空間でもあるが、同時に繋がる道でもあることを体験から学び、島国日本の展望は明るいと感じる。小生が受けた海からの学びをこれからも繋げて行くこと、それが、海に学んだ小生の使命ではないかと思う。今年66歳、人生の終活に向けて海に学ぶという襷を繋いで行ければ幸いである。


佐藤茂夫 NPO法人玄海ライフセービングクラブ(L.S.C)海辺の自然学校 校長
http://www.genkai-lsc.info/

2017年09月11日|キーワード:ライフセービング,自然,体験,指導者