第149号「東京湾産天然浅草海苔養殖復活」関口雄三

第149号「東京湾産天然浅草海苔養殖復活」2019.2.22配信

 私たち認定NPO法人ふるさと東京を考える実行委員会では、2008年から葛西海浜公園西なぎさで、海苔の育成を開始し、2011年から絶滅危惧種である浅草海苔の育成も始め、鳥よけ網を設置することにより、その養殖に成功してきました。
 しかしながら、これらの海苔は、種網を木更津の知り合い漁師から購入していたものだったのですが、浅草海苔については、食害がひどく採算に合わないなどの問題から、2017年度になると漁師さんは種網の生産を取りやめることになってしまい、私たちは新たな方策が必要となっていました。
 そんな折、必要な時に必要な人が現れるものです。(株)フィスコの関根さんから、東京湾産の天然浅草海苔の育成を協働でやらせてほしいとの提案があり、当会としても2007年に葛西海浜公園東なぎさで天然の浅草海苔を発見していることもあり、2016年には、葛西海浜公園東なぎさで育成に用いる天然の浅草海苔を採取するまでになりました。
 そして、本年度は、DNA鑑定済みの多摩川河口産浅草海苔の糸状体を使って、6月にかき殻に穿孔させ、11月に胞子を出させて種網を作成、これを葛西海浜公園西なぎさで育成し、順調に生育したため収穫を行い、海苔すき体験に使用するまでになりました。海苔すき体験を東京湾産の天然浅草海苔で行っているのは、私たちくらいのものでしょう。
 ところで「地っ子」と呼ばれる東京湾での浅草海苔養殖は約50年前に消滅しており、その天然の浅草海苔の養殖を私たちが復活させたことは、今後、「NPO漁師」として、東京湾の一次産業の復活に寄与できることに一筋の光を与えてくれるものであってほしいと考えています。そして、このような漁師の復活は、海の守り人の復活であり、里海としての東京湾の再生につながるものと信じています。
 なお、近年、海苔やわかめの鳥や魚による食害が深刻になってきていて、今年は、産地である木更津も横浜も横須賀も皆、海苔とワカメの養殖業者は食害による深刻なダメージを受けています。自然と人間の共生を図っていくためには、鳥も魚も人間も調和した生態系を形成する必要があり、そのための対策も必要になるのではないでしょうか?
東京湾の再生、そしてふるさと東京の再生、そして、そのためにどのように活動したかを書いた著書「ふるさと東京再生」(幻冬舎)も一読していただければ幸いです。

CNAC理事/認定NPO法人ふるさと東京を考える実行委員会 理事長 関口 雄三

2019年2月12日|キーワード:環境、漁業