第147号「海の環境教育や海洋の保全」安西英明

第147号「海の環境教育や海洋の保全」2018.12.27配信

 SDGs(持続可能な開発目標)には、14.海の豊かさを守ろう、15.陸の豊かさも守ろう、などと記されています。が、根本的な問題があります。SDGsでは「持続可能な利用」について高らかに謳われている一方で、生物についての基本的な理解がまだまだ不足していることについての認識が欠けているのではないでしょうか?
生物や生物を取り巻く環境や宇宙については、まだわかっていないことが多く、今も研究が続いているという現状が、きちんと認識されているとは思えません。生物の分類についても、例えばチンパンジーやゴリラが1種ではなかったことや、同じヒト科に分類されるようになったことはご存知ですか?
 また、命は生きのびるのが当たり前と思い込んでいる人が多いことも、大きな誤解として危惧されます。命の多くは他の命の食物になるからこそ、生物多様性や持続可能性があるのです。例えば、マンボウは最多の3億個もの卵を産むと言われてきましたが、億単位の卵を産む生物は他にもいるでしょうし、それら多産の生物でも増えすぎることがないワケを考える必要があります。
 話題を海に絞りましょう。環境教育の観点で大切なことは「命は海で誕生したこと」「地表の70%は海であること」「私たちの体の成分として70%を占める水の組成も、90%以上は海水と同じということ」でしょうか。近年は、光の届かない深海の生態系などが明らかになりつつある一方で、いかにわかっていないかが、より認識されるようにもなりました。
 世界の鳥類のうち海鳥は7%ですが、日本産鳥類では633種のうち海鳥は120種で、19%に及びます。特に、日本近海にしかいない海鳥の保護は重要度が高く、カンムリウミスズメの保護活動については日本野鳥の会による取り組みがホームページで紹介されています。(https://www.wbsj.org/nature/kisyou/sw/
 あわせて、マリーンIBAのサイトなどもご参照下さい。海鳥の重要生息地としてこれまで27箇所の海域を指定しています。
https://www.wbsj.org/activity/conservation/habitat-conservation/miba/

 海に囲まれた日本は、海洋の保全に積極的に取り組む責務があるとも言えましょう。

 

安西 英明
公益社団法人 日本環境教育フォーラム 理事 http://www.jeef.or.jp/
公益社団法人 日本野鳥の会 理事 https://www.wbsj.org/

2018年12月25日|キーワード:環境、生き物